AMD のXilinx 買収について (底辺) FPGA エンジニア目線で考えてみる

FPGA

先日発表されたAMD によるXilinx の買収について、(底辺) FPGA エンジニア目線で考えてみました。

AMD とXilinx について

このタイトルでいらした方々には不要かも知れないが、AMD, Xilinx それぞれについてざっくりと記載する。詳細はHP やWikipedia でご確認ください。

AMD

Xilinx

AMD はなぜXilinx を買収したのか

正直なところ、経営的な側面からだと今回の買収が評価されるものなのかそうでないのかの判断はつけられない。この側面については様々なメディアが論評を行うだろうし、最終的にはAMD の株価として反映されるだろうから、素人としてはそれを見守るのがいいのかなと考えている。

一方、技術的な側面からみたときに「Xilinx を」買収したという事実から多少読み取れることはあるかも知れない。旧Altera はすでにIntel 傘下なので難しいとしても、単純にFPGA 技術が欲しかったのであれば別にLattice でもよかっただろうし、他の小さめの会社でもよかっただろう。「旧Altera を除くFPGA メーカーにはなく、Xilinx にはある」特徴なり魅力なりがあったのだと思う。私が具体的に考える内容は下記になる。

  • FPGA 分野でのマーケットシェアが1位であること
  • データセンター向けの自社製FPGA ボード(Alveo)を有していること
  • FPGA+CPU のSoC 技術を持っていること
  • HBM 技術をFPGA の分野で有効活用していること

x86+FPGA のチップは誕生するか

この話題については活発な議論が行われるだろうが、私の考えは下記の通り。

  • おそらく誕生はする
  • データセンター向けの超ハイエンドモデル限定となる
  • 一般人が気軽に購入できる値段にはならない

これは非常に個人的な意見となるが、メモリ上に配置されたデータに対してなんらかの処理を行う、つまり典型的なCPU やGPU のような処理においてFPGA が性能面でアドバンテージを得られる分野はほとんど存在しないと考えている。平たくいえばほとんどのケースにおいてCPU やGPU の方が速いし、それでいて開発も簡単なのだ。

では、FPGA がなんらかのアドバンテージを得られる分野はどこなのか。私は以下のように考えている。

  • 性能に対する電力消費量が重要視される分野
    • 具体的には、データセンターやモバイルデバイス
  • データがストリームで入力され、逐次的に処理が可能な分野
    • 具体的には、ネットワークや画像処理

モバイルデバイスについてはARM CPU が幅を利かせているから、わざわざx86 で殴り込むことはしないしできないと思う。Xilinx はすでにARM+FPGA のZynq シリーズを持っているからそちらを有効活用するだろう。

データセンター向けには可能性がある。「x86 向けのソフトウェア資産を活かしながらFPGA アクセラレーションできますよ」なんて言えそうだ。もちろん、FPGA でのアクセラレーションは全然簡単な話ではないので、謳い文句を鵜呑みにした経営者に振り回されるエンジニアの姿が想像に容易い。皆さん、頑張りましょう。

ただし、すでにハイエンド領域でもARM CPU の活用が始まっているので、時間との勝負になるかも知れない。超高性能ARM CPU + 超ハイエンドFPGA みたいな方が将来性があるかも。というかそっちの方が見てみたい。夢がある。

ネットワークという意味ではSmart NIC 分野にAMD が期待している可能性もある。ネットワークはデータがストリームで入力される代表例なのでFPGA の特徴が活かしやすいし、CPU やGPU は基本的にネットワークに直結はされないから十分なアドバンテージになりそうだ。特に100 GbE 等の超高速ネットワークを使用する基地局とかデータセンター向けにおいて伸び代があると考えていても不思議では無いと思う。

Xilinx の名前は残るか

これについては残らない可能性が高そうだ。AMD はかなり昔にGPU メーカのATI を買収しているが、この時は早々にATI のブランド名を撤廃しAMD としていた記憶がある。時代が違うとはいえ、今回も同様の方策をとっても不思議ではないと思う。

数年前にAltera を買収したIntel も早々にAltera ブランドをIntel FPGA の名称に変更しており、CPU の巨人がFPGA を吸収する構図は瓜二つであるから、同様の結果になることに違和感はなさそうだ。

開発ツールVivado, Vitis は無料のまま使用できるか

少なくとも1年以内に突然有料化する可能性は低いだろう。ハイエンド向けのチップよりも利益を確保しにくいローエンドチップ対象とはいえ、FPGA 開発者の裾野を有料化によって小さくしたり、他社のシェア拡大を許すような手は易々と打つとは思い難い。

ただし、念密なロードマップに基づき徐々に無料部分を縮小していく可能性は否定できない。現在のVivado は開発に有用なほとんどのIP を無料で使用できるし、Vitis に至っては完全無料だ。IP の機能や性能アップグレードのタイミングで徐々に有料化していくことは現実的だと思う。

個人が購入可能なレベルのFPGA は製造され続けるか

少なくとも現状販売されているものが突然ストップされる可能性は低いだろう。ローエンドFPGA が巨額の赤字を垂れ流していて経営の足かせになっているのだならば話は別だが、そんなことは無いだろうし、そんな企業を買収したりはしないだろう。

だが、これから先開発が縮小される可能性は考えられる。もし儲からないと判断したら新規に開発することはやめるだろう。個人レベルで楽しんでいる身としては悲しいが、それが会社としてあるべき姿だと思う。

そう考えると、今後はUltra 96 のような個人開発者向けの超ハイコストパフォーマンス製品は登場しなくなるかも知れない。